2004/03/28(日)
02:46
人間万事塞翁が馬 大3 99秋〜00春
参
彼は5人兄弟姉妹の最後に生まれた
彼はその中でも一番頭が良く、地元でも有数の私立中学へと進んだ。
彼が学生時代に家業が傾き家計は苦しくなった。
高校時代に彼はあまり勉強をしなくなった。
大学入試の際に彼は無難に受けられる今でもあまり偏差値の高くない
彼の通っていた高校からは行く人がいないレベルの大学に進むことになった。
大学卒業後彼の親や周りからの助けもあって就職はかなり良い会社から内定を得られた。
しかし、彼が当時付き合っていた女性の親が倒れたこともあって彼は地元に残る決意をする。
東京本社採用という高待遇を断って彼は地元自治体の採用試験を受ける。
彼が断った会社からはその後長い間、彼の通っていた大学からの卒業生は採用されなくなった。
彼は下から数番目の成績で自治体から採用されることになった。
おりしも高度成長期等などで経済は右肩上がりが続きその後もそれは続いた。
彼は女性と結婚し、その自治体に勤めながら仕事に関係する高難度の資格試験をいくつかパスした。
彼の中高時代の同窓は法曹、医薬、政財界にと進むものがよく見られた。
また、同期、同年代の知人の給与等も彼とは比較にならないぐらい良かった。
彼の心の中にはいくつかのもやもやが生まれた。
バブルが弾けた
親類に自己破産する者も出た
親が死んだ 病気になった
現在、彼の職場には毎年僅かな数の新規の人間が入ってくる。
皆、以前では考えられない学歴や経歴の人間だった。
昨今のニュースでは彼の職場も含めた色々な仕事内容が監視されてる気がした。
何かの拍子で職業欄等に答えるときに自分の勤務する自治体だけを言うと
相手は複雑な視線を投げかけてこちらを見直すことが多いので、
最近は勤務する部署だけを言うことにして、相手が聞き返してきたときに曖昧に自治体名を言うことにした。
今でも拭いきれないわだかまりが彼の中には存在している。
99年の初夏にパソコンを購入した。
その頃は就職に関しても、公務員試験に関しても情報を得るのには
インターネットだと思ったからだった。
かなり苦労を重ねてPCとネットに関する大体を理解して、
ネットにどっぷりはまることになった。
そして秋が来て公務員試験を思い立ち、これに関する情報なども集めるようになった。
試験要項、試験問題、試験概略、そして勉強の仕方、合格体験記。
勉強と平行しながらネットをやっていた。
今思うと、これもこれで活用の仕方があまりよろしくなかったように思う。
けれど、このときに始めていたからこそ、今の自分もあるのだと思う。
そして秋まで本格的に勉強しなかった訳はもうひとつある。
よく騒がれていたノストラダムスの大予言だった。
半分、イヤ3分の1なにかしらの天変地異みたいなものが起きると信じていたので、
それまでにやりたいことをやろうと思っていた気持ちもあった。
高校生、浪人時代に思い描いていた夢や目的なんかは大概叶えられたので、
両親には悪いと思ったけど、そのとき死んでしまっても良かったかななんて思っていた節もある。
実際、この後やってくるモノを知っていたらもっと自暴自棄な生活をしていたかもしれない。
「最近のこと」
幼稚園の頃から中学まで同級生だった女性をみた。
彼女は小学生の頃に両親が離婚し、一度転校して戻ってきたのだった。
中学の頃は知らないうちに不良グループの一人になっていて、その中の男と親しくなっていた。
自分が高校生になった頃、本屋の帰りに
その彼女が男とまるで落ち着きのある夫婦のように歩いているのを見た。
自分が大学生になって地元に帰ってきていたときに繁華街のスポーツ店の前で
声を上げてセール中の呼び込みをやっているのをみかけた。
先日午後、近所を歩いていたら自転車に幼児用シートを中央に付けた自転車で
3歳ぐらいの子供を乗せた女性が通り過ぎていった。
少し浅黒くなった顔にわずかながらの化粧をして、しっかりと母親の顔になっていた。
近況、詳細さっぱりわからないけれど、彼女は自分の半生をどう感じているだろうか?
そして、全く比較対象にはならないことはわかっているのだけれど、
自分が世間一般、社会全体から置き去りを食らっていた年月の長さを
なんとなく感じて少し鬱だった。